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  • 2025.9.9(最終更新日:2025.10.21)

    <施工管理>単線結線図の基礎解説

    単線結線図とは、電気回路の全体像を示す図面で、変圧器や遮断器などの機器を記号で、配線を一本の線で表現し、回路の接続関係を簡潔にまとめたものです。全体の電気の流れや機器の配置を容易に把握できるため、電気設計や工事計画の際に使われ、「スケルトン」や「単結」とも呼ばれます。
    単線結線図は回路の概要を示すのに対し、実際の電線やケーブルの本数まで詳細に記載したものが「複線結線図」です。単線結線図を基に複線結線図を作成することで、具体的な配線作業のミスを防ぎ、正確な工事を行うことができます。 

    ここでは、高圧受電設備の単線結線部の一例を基に、主な機器の名称、機能の要点を学習していきます。

    高圧受電設備の単線結線部

    各機器の名前と機能

    (1)地絡継電装置付高圧交流負荷開閉器(GR付PAS)

    Ground Relay付 Pole Air Switch
    電力会社との責任分界点の区分開閉器として設置され、保守点検時の安全確保や需要家内施設での地絡事故発生時の他需要家への事故拡大を防止する。

    地絡事故とは
    電気回路から本来流れてはいけない大地へ電流が漏れ、感電や火災、停電を引き起こす危険な事故です。

    (2)電力需給用計器用変成器(VCT)

    Voltage and Current Transformer
    需要家が使用した電力量を積算し表示するために、計器用変圧器と変流器を一つの箱に組み込んだもので、変成された電圧と電流を電力計へ送り出す機器。

    電力需給用計器用変成器(VCT)=計器用変圧器(VT)+計器用変流器(CT)

    計器用とは
    高電圧・大電流を、電圧計や電流計などの計測・保護機器が扱える低電圧・小電流に変換する機器を総称し、「計器用」と呼びます。
    高圧以上で受電する需要家は、そのままでは電力量を計測する事は困難です。その為に計器用変成器を高圧回路に設置して、 変圧・変流し扱いやすい低圧にして(=変成する)、電力量計に接続して計測します。

    (3)断路器(DS)

    Disconnecting Switch(ディスコン)
    保守点検時において、無負荷状態の電路を開閉するもので、無負荷の変圧器励磁電流や回路の充電電流程度の開閉能力しかないため、負荷電流は開閉できない。

    負荷電流とは
    電気回路で負荷(電気を消費する機器)に供給される電流のことです。断路器の役割は、回路をオープンにし、回路に電流が流れないようにすることです。負荷電流のない状態でオープンにすれば、万が一誤って電気を送ってしまっても、断路器から下には電圧がかからないので安全に作業をすることができます。

    変圧器励磁電流(れいじでんりゅう)とは
    変圧器は、鉄の心に巻いたコイルに電気を流して磁力(磁束)を作り、その磁束を使って電圧を変える仕組みです。この時、鉄心の中に磁束を発生させるために、最初に必要となる小さな電流が流れます。この電流を励磁電流といいます。
    例えば、自転車を漕ぎ出すときの最初のひと漕ぎ、あの「動き出すための力」が励磁電流です。

    充電電流とは
    ケーブルやコンデンサに電気をためるときに流れる電流のことで、実際の負荷を動かす電流ではなく、電圧をかけたときに自然に流れる“ため込み用”の電流です。


    (4)高圧交流遮断器(CB)

    Circuit Breaker
    電路に過電流や短絡電流が発生した場合に、過電流継電器からの信号を受けて、自動的に電路を遮断する。

    過電流継電器とは
    電気回路に異常な大きな電流(過電流)が流れた際に、それを検出して遮断器を動作させ、機器や配線を保護する装置です。「継電」とは、電気系統において事故や異常を検出して電気回路を制御することをいいます。

    (5)避雷器(LA)

    Lightning Arrester
    雷などによる衝撃過電圧を大地に放電することにより、電気設備の絶縁を保護し、通常の状態に自動的に復元するもの。

    (6)高圧限流ヒューズ付高圧交流負荷開閉器(PF付LBS)

    Power Fuse付Load Break Switch
    高圧限流ヒューズと高圧交流負荷開閉器を一体に組み合わせた機器で、限流ヒューズ部では過電流と短絡電流を遮断し、負荷開閉器部では、負荷電流の開閉を行う。

    高圧限流ヒューズと高圧交流遮断器の違い
    高圧限流ヒューズは短絡電流を限流(抑制)する働きに特化し、負荷開閉器(LBS)と組み合わせて使用されます。
    一方、高圧交流遮断器(CB)は、単独で負荷電流の開閉から、短絡電流などの大きな過電流まで遮断する能力を持ちます。

    (7)直列リアクトル(SR)

    Series Reactor
    高圧進相コンデンサを電路に接続した場合に生じる高調波電流の流出抑制と、コンデンサ回路の開閉による突入電流を抑制する機器

    直列リアクトルと進相コンデンサは多くの場合セットで設置されます。進相コンデンサには、高調波を増幅させてしまう作用があり、高調波は、電力系統の電圧波形を歪ませ、機器の過熱や焼損、誤作動、通信機器へのノイズ混入、計量誤差、寿命短縮などを引き起こすため、直列リアクトルで高調波電流の流出を抑制します。

    コンデンサ回路の開閉時における突入電流は、電源投入直後にコンデンサの充電が始まることで発生する、定格電流よりもはるかに大きな瞬間的な電流です。この突入電流は、コンデンサへの負荷や接点の損傷、電気的ノイズの発生などの原因となります。回路に直列リアクトルを導入することで、突入電流を抑制する保護回路を設けることが一般的です。

    高調波電流とは
    商用電源の基本周波数(50Hzまたは60Hz)の整数倍の周波数を持つ電流成分で、インバーターやパソコンなどの電力変換を行う機器から発生します。高調波が加わることで電流の波形がひずみ、電力設備に過熱や焼損、力率低下などの悪影響を及ぼします。

    (8)高圧進相コンデンサ(SC)

    Static Capacitor
    変圧器と並列に接続し、力率改善、電力損失の軽減、無効電力の削減を行い、電気料金の割引を受けることもできる

    高圧進相コンデンサは、キュービクルや受電所などで使用される重要な電気機器です。電力会社から供給される高圧電力を効率的に使用するために不可欠であり、変圧器によって電圧を下げてから動力源として使用されます。
    多くの負荷は力率の遅れが原因で無効電力が発生し、電力の無駄が生じますが、高圧進相コンデンサはこの位相を進めることで力率を改善し、効率を大幅に向上させることができます。


    単線結線図は、電気設備の全体構成を一目で把握するための基本図です。図面の意味を理解し、実際の設備とのつながりを意識することで、確実な施工とトラブル防止に役立てましょう。