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2024.1.10(最終更新日:2024.8.5)
<電気通信>電波やアンテナの種類について解説
電波の見通しとは?
電波の「見通し」とは、送信者と受信者がお互いに見えている状態のことです。人間の目では見える距離に限界がありますが、電気通信では送受信間に障害物がない形を「電波の見通し」と呼んでいます。
電波の種類
電波法では、300万MHz以下の周波数の電磁波を電波と定義しています。周波数が低くなるほど、直進性が弱く情報伝送容量が小さくなります。
また、周波数が高いほど降雨による減衰が大きくなります。
電波の種類によって、特徴や用途が異なります。電波の種類 波長 周波数 特徴 VLF 超長波 100km 3kHZ ・地表面に沿って山をも越える LF 長波 10km 30kHz ・昔の電信用、今はあまり使われない MF 中波 1km 300kHz ・安定していてAMラジオに使われている。約100kmに形成されるスポラディックE層に反射して電波を伝える HF 短波 100m 3MHz ・船舶通信、アマチュア無線に使われる VHF 超短波 10m 30Mhz ・FMラジオ等業務用移動通信に幅広く利用されている
・テレビ放送ではアナログ時代に使われていた
・山や建物の影にも回り込んで伝えることがある
・見通し距離での直接波で伝える
・通常は電離層を突き抜け宇宙へと進むが突発的にスポラディックE層が発生すると遠くまで伝えることがある
・グランドプレーンアンテナや八木アンテナ等が使われるUHF 極超調波 1m 300Mhz ・小型のアンテナと送受信設備で通信できる
・携帯電話、地上デジタルテレビ放送等に利用されているSHF マイクロ波 10cm 3GHz ・直進性が強い
・衛星通信、衛星放送、無線LAN、気象レーダー等に利用されている
・パラボナアンテナが使われることが多い
・雨が降ると減衰が大きい(水蒸気による減衰より大きい) <固定局間のマイクロ波通信>
・指向性が鋭く、利得の高いアンテナを使える。
・無線機とアンテナ間は給電線路として、導波管または同軸ケーブルが使用される
・見通し距離内の通信に制限されるため、中継器が設けられる。(直接中継方式・・アナログ方式には使われない)EHF ミリ波 1cm 30GHz ・短距離の簡易無線等に使われている
・雨が降ると減衰が大きいTHF サブリミ派 1mm 300GHz ・巨大な無線設備が必要で水蒸気による吸収が大きいため通信用としてはほとんど利用されていない
・雨が降ると減衰が大きいスポラディックE層とは?
春から夏ごろにかけて、主に昼間に上空約100km付近に局地的・突発的(スポラディック)に発生する特殊な電離層で、この電離層の電子密度が極度に高い場合は、F層でも反射できないVHF帯の電波をも反射するという特殊な性質がある。E層の存在は数十年前から知られ、垂直構造は理解されているものの、水平分布は観測が難しく、現在でもよく理解されていない不思議な電離層です。
フェージングとは?
無線局の移動や時間経過により、無線局での電波の受信レベルが変動する現象のことで、「衰調」(すいちょう)とも言います。
例えば、携帯電話では、中継局との位置関係により中継局から発射される電波が干渉し受信レベルが変動することがあり、最悪の場合には、通話が途切れる恐れもあります。
フェージングはその原因により多数の種類が存在します。フェージングの種類
フェージングの種類 原因 偏波性フェージング 電波が大地や建物に反射して受信レベルが変化するため 吸収性フェージング 周波数が10GHzを超え、天候や水蒸気によって吸収・散乱されるため 干渉性フェージング 送信点から放射された電波が2つ以上の複数の異なった経路を通り、距離に応じて位相差をもって受信点に到達するため 跳躍フェージング 電離層の変動に伴って跳躍距離が変化するため K形フェージング 地球の等価半径係数が変化するため アンテナの種類と特徴
幅広い電気通信の分野の中でも、花形と呼べるのが無線工学です。アンテナの取り扱いや電波の発射には、無線従事者免許が必要となる等、高度な技術分野になります。ここでは様々な無線アンテナの種類とその特徴について解説します。
半波長ダイポールアンテナ
半波長ダイポールアンテナは、計算上の基本となる形のアンテナ
・波長の1/2λの長さで、垂直に設置した時に水平全方向に電波の送受信が可能
・放射抵抗73.13Ω
・水平に置いた場合の水平面内指向性8の字型
・絶対利得2.15dB八木アンテナ
半波長ダイポールアンテナから派生し、宇田氏と八木氏の共同開発で誕生したアンテナ
・導波器、放射器、反射器の3つで構成
ブラウンアンテナ
半波長ダイポールアンテナから派生し、G.Brown氏の開発で誕生したアンテナ
・5本の棒状エレメントで構成
コーナレフレクタアンテナ
面積や角度の要素を持つ立体アンテナの一種で、半波長ダイポールアンテナと反射鏡によって構成されるアンテナ
・反射器の後方にV型の反射器を配置電磁ホーンアンテナ
立体アンテナの一種で、角錐型、円錐型のアンテナ
・ホーンの開き角の大きさは周波数に影響しないバラボラアンテナ
放射面をもつ反射器と一次放射器から構成されているアンテナ
・鏡面の精度が劣化すると再度ローブの上昇や利得の低下が発生
・一次放射器や支持柱によるブロッキングでサイドローブ(ノイズ)が発生する
マイクロ波通信とその特徴
マイクロ波を用いた無線通信のことで、非常に広帯域の信号を伝送できるためテレビや超多重電話等の中継伝送に広く用いられています。見通し外の通信を行うために中継局が用いられています。指向性が鋭く、利得の高いアンテナを使用することで混線が発生しにくくなり、無線機とアンテナ間の供給線路として導波管または同軸ケーブルが使われています。
マイクロ波通信の中継方式
再生中継方式
受信したマイクロ波をいったん復調し、再度別の周波数で変調して送信する方式
デジタル方式のみ使われ、アナログ方式では使用されないヘテロダイン中継方式
受信したマイクロ波帯の信号を中間周波に変換して増幅した後、再びマイクロ波隊に変換して電波として放射する方式
無給電中継方式
電波を反射板などで反射させて電波の方向を変えて中継する方式。中継の電気が不要。
直接中継方式
中継所でマイクロ派をそのまま増幅して送り出す方式
ダイバーシチ
無線信号を複数のアンテナで受信することで通信の質を上げる技術のことを「ダイバーシチ(ダイバーシティ)」といいます。
ダイバーシチの種類
空間ダイバーシチ
フェージングによる影響を軽くするため、複数の受信アンテナを数波長以上離して設置し、信号を合成または切り替えることで受信レベルの変動を小さくする方式
偏波ダイバーシチ
垂直偏波を受信するアンテナからの出力と、水平偏波を受信するアンテナからの出力を合成または切り替えることで受信レベルの変動を小さくする方式
レーダ
レーダとは、電波を対象物に向けて発射し、その反射波を測定することにより、対象物までの距離や方向を測る装置のことをいいます。
レーダの種類
MPレーダ(マルチパラメータレーダ)
水平偏波と垂直偏波を同時にマルチ発射して観測しているレーダーのこと
Xバンドレーダ
9GHxz帯のレーダで、Cバンド(5GHz帯)に比べて高い周波数を使用するため、アンテナ直径が小さくなる。Cバンドレーダよりも観測範囲が狭い。
レーダ雨量計
空中線から電波を発射して雨粒にあたり散乱して返ってくる電波を収集することで観測を行う
レーダの性能
レーダの性能を測る指標には次のものがあります。
最大探知距離/最小探知距離
物漂を探知できる最大の距離/認識できる最短の距離
方位分解能
レーダから同じ距離にある二つの物漂を見分けることができる物漂間の最小距離
距離分解能
レーダからの方位が同じで、距離が隣接した二つの物漂を画面上で識別して表示できる物漂間の最小距離
GPS
GPSGlobal Positioning System)とは、地球の周回軌道を回る24個の衛星から発信される情報を利用して、受信者とGPSの衛星の位置関係を測定し、現在地の緯度・経度を計算するシステムです。この衛星は米国国防総省が運営しており、その精度などは諸事情により予告なく変更されることがあります。
GPS衛星は6つの軌道面にそれぞれ4個以上配備されていて、4機以上の衛星からの電波を受信できれば位置の特定や時間の補正が可能になります。GPS衛星には原子時計が搭載されていて、変調にスペクトル拡散方式が使われています。
まとめ
電波は障害物によって遮られやすく、地形や建物によって影響を受けます。また、大気中の湿度や気温なども伝播特性に影響を与える要因となります。これらの要素を考慮して、通信エリアや通信品質を向上させるためには適切な周波数帯域やアンテナの配置が必要です。
電波の見通しを最大化し、通信の安定性や効率を向上させるためには、地域や用途に応じた周波数帯域やアンテナの選択が重要です。障害物や地形の影響を最小限に抑え、信号の劣化を防ぐためには、十分な計画と設計が必要です。これにより、通信網の信頼性向上や新たな技術の導入においても有益な結果が期待されます。防犯カメラの設置の際、公道を経由する、敷地が広いなどの現場では、無線での映像信号送信もご提案いたします。無線での防犯カメラ設置をご検討の際は、お気軽にNBCへお問い合わせください。